品川区の環境ポータルサイト

区民環境記者レポート(記者募集中)

当センターでは区民環境記者を募集中です。ご興味のあるかたは左のメニューより「◆区民環境記者について!」をご覧ください。(区民環境記者レポート(記者募集中)のトップへ戻る

わたくしの課題図書

カテゴリ:令和元年度

投稿日:2019年08月21日

 涼しい7月も梅雨が明けた途端、猛暑・酷暑が続いています。熱中症予防にと、避暑地・図書館へ通う日が増えています。そんな図書館の子どものコーナーで課題図書を発見。夏休み最終日に、泣きべそをかきながら本を読み、眠たい目にメンソレータムを近づけて、感想文を綴った頃からすでに半世紀が経ちました。懐かしさとともにちょっと挑戦してみようかなっ!という軽い気持ちで大人の新刊コーナーへ。待っていましたとばかりに、「環境」と名のつく本が二冊も。

  「地球環境 陸・海の生態系と人の将来」 
 「季刊環境ビジネス2019年夏号 2050年脱炭素社会の実現へ」

「地球環境 陸・海の生態系と人の将来」
 まず、「森川海と人プロジェクト 気仙川・広田湾調査 各年度の調査を写真で振り返る。」とのタイトルで陸前高田市広田湾の2019年航空写真から2015年まで遡る写真が続いています。ぷっくりとしていない牡蠣や中身が詰まっていない雲丹の写真に、市場に出まわっているのはどこのもの???

 まえがきでこんなことが書かれていました。「すごいスピードで人類は、地球環境を破壊している。これまでの四五億年の地球の歴史で生命が誕生したのは四二億年前から三八億年前で、この間に生物の大規模な絶滅は五回あった。」「現生人類が誕生したのが、約二十万年前と言われる。その間に人類は数多くの生物種を滅ぼした。」「人類による生物の絶滅はとても近いといわれる」「それを回避するのはまた人類しかいない。」ここに二冊の本が紹介されています。

  「The Sixth Extinction」エリザベス・コルバート著
  「Half-Earth」O.J.ウィルソン著

 序章・直面している地球環境問題では、復興事業における環境評価を伴わない、防災という名目での堤防作り・河川工事について触れています。自然が持っている自浄作用・循環機能が失われてしまった、これが新たな課題を作っていく、との示唆を感じさせられます。第三章・陸・海の生態系の現状と課題では、日本の陸上生態系の二度の変化について述べています。一度目は水田稲作を中心とした農耕の発達による「里山二次生態系」、二度目は現在進行中の化石燃料を含む資源等の調達を基礎にしたグローバルな生産・消費社会化。前者は、地域の自然・生態系内でそれを活かした生活をすることで成立・維持されてきた江戸時代まで。後者は、陸域全体から海岸・沿岸域さらには海域全体に影響が及んでいて、少子化の進行と自然・生態系の姿を知らない若年層の増大・それらの維持管理ノウハウなどの社会的喪失が「利用されず放置された自然・生態系」と人の利用する「完全管理の目的生物だけがいる人工空間」への道を早めるとの危機感を述べています。

  広田湾調査だけでなく、日本全国での環境保全活動の紹介に続いて、海外での取り組みも紹介されています。後記の手前に載っていたコラム「スタインベックの故郷カリフォルニア」は私の興味をそそりました。スタインベックは、生物学者のエドワード・リケットをメンターとし、彼の生物研究所を手伝っていたそうです。「怒りの葡萄」「エデンの東」「缶詰横丁」それぞれのモデルが誰であったかの解説は、モントレー市の街並やモントレー湾の生態系の再生に尽くしていた彼の足跡と共に、わたくしの課題図書を増やしてしまいました。

「季刊環境ビジネス2019年夏号 2050年脱炭素社会の実現へ」
  大特集「2020環境都市へ生まれ変わる東京」は128ページのうち24ページを割いての特集。内容はオリンピック・パラリンピックの暑さ対策・多言語対応・地下鉄の取り組み・トイレ整備・選手村とニュータウン・健康リスク・ゴミ問題、最後に訪日客への情報発信と多岐に渡っています。例えば、暑さ対策。クールスポットとして自由に出入れできる施設やミスト設備を設置し、競技会場周辺車道を遮熱性舗装し、街路樹の樹形を日射しを遮るように計画的に剪定し、競技会場等には仮設水飲み場を設置する計画のようです。

  東京モノレール線大井競馬場前駅および京浜急行線立会川駅から八潮に隣接するホッケー会場までの経路についてみると、現時点では「なぎさ会館」横の公衆トイレ前にミスト設備の工事を行っているだけ。来年の夏までに間に合うのでしょうか?また、ゴミ問題も猛暑と合わせるとペットボトルの急増必死。分別区分もスタジアム系とコンベンション系と鉄道会社系施設でゴミ箱いろいろ。23区内でも区ごとに区分は異なる。あちらこちらで混乱しないのかなあ?と考えてしまいます。ただ、好事例としてNPO法人iPledgeがフジロックフェスティバルなどの大きなイベントで行っているエコステーション(大きくわかりやすいごみ箱)とごみ資源の分別ナビゲートの取り組みが紹介されていました。

  その他に目をとめた記事として、資源循環先進国オランダのサーキュラー・エコノミー。国土が狭く、人口密集率が高く、中世の頃から洪水と戦ってきたオランダ。天然資源も乏しいということから、政府は2030年までに持続可能でない一次原材料(鉱物・化石燃料・金属)の使用を半減し、2050年までにサーキュラー・エコノミー(循環型経済)を100%実現すると宣言したそうです。中心となる財団のオフィスは築125年の農家のリノベーション。事例として女性3人で設立したスタートアップThe Great Bubble Barrierが紹介されています。運河や川底にゴム製チューブを固定し泡を出してカーテンを作り、ごみをせき止めるアイデアを実用化したそうです。この水泡カーテン、実はタンカー事故などでオイル流出防止や海底油田開発での水中騒音軽減のために使われていたもの。とにかくたくさんの専門家たちに話を聞いたそうです。

  海洋プラスチックごみ問題については、もう一つ「丸ごと食べてしまえる食品パッケージOoho!」という記事がありました。原料は「褐藻」と総称される多細胞藻類で海洋に大量に存在する海藻。スペイン人のロドリゴとフランス人のピエールが試作品開発に成功し、2014年にロンドンで起業したのが、Skipping Rocks Lab。クラウドファンディングを始め、助成金で資金を調達。2018年夏、Sky Ocean Ventureから追加投資を受け、マッカーサー財団やシュミッツ財団が出資する3カ年計画「New Plastic Economy」でCircular Design Challenge賞を受賞してビジネスを拡充中のスタートアップ企業だそうです。 

  今回、期せずして二冊の本を手に取りましたが、私たちを取り巻く環境は人によって課題解決のために更に課題を作ってしまう現実について考えさせられました。しかし、もう一方では、自然がもともと持っている力を人の知恵で引き出して利用する方法も探り、自然との調和を図ろうとする人々のアイデアとその可能性を垣間見ることも出来ました。二冊の本の感想文ならぬ紹介文になってしまいましたが、ものの見方・捉え方について考えさせられた夏となりました。

<参考図書>

「地球環境 陸・海の生態系と人の将来」
   著者:小松正之、望月賢二、堀口昭蔵、中村智子
   初版発行:2019/07/25       発行所:株式会社雄山閣

「季刊環境ビジネス2019年夏号 2050年脱炭素社会の実現へ」
   発行元:事業構想大学院大学 出版部
   発行:2019/07/01           発行元:株式会社日本ビジネス出版

    
令和元年8月16日
環境記者 小滝静子

カテゴリ:令和元年度

投稿日:2019年08月21日