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過去の講座を紹介します

環境情報活動センターでは、毎月2~3の環境学習講座を開催しています。リサイクル講座・木の実などを使ったクラフト講座・自然観察などのフィールドワーク・夏休み子ども講座・環境教養講座など、多彩な内容でお送りしています。 このコーナーでは、講座のレポートを掲載していきます。(過去の講座を紹介しますのトップへ戻る

江戸落語に出てくる環境噺

カテゴリ:平成27年度

投稿日:2016年02月12日

 平成28年1月24日(日)品川区環境情報活動センターにおいて、環境学習講座「江戸落語に出てくる環境噺」が開催されました。講師は講演、著述、テレビ・ラジオ出演など多方面で活躍中の江戸文化研究家の菅野 俊輔さんです。
 
   
 落語は18世紀(江戸時代中期)後半に誕生し、19世紀(江戸後期)になって庶民の娯楽として定着しました。江戸時代の咄家は大工の棟梁や櫛職人といった仕事と兼業している人々がほとんど、お客も、職人や小売商といった庶民が中心で、仕事のあとの夜のひと時を楽しめる時間として庶民のあいだに人気が増していきました。本日は品川を舞台とした『品川心中』と品川区に縁の深い『目黒のさんま』の二作品を紹介していただきました。
〔品川心中〕
 舞台は東海道の宿場の一つ、第一番目の宿場町で、非公認の岡場所としても有名な品川宿です。品川宿は目黒川を境に北を北品川宿〔本宿〕、南を南品川宿、そして後に誕生した歩行新宿(かちしんしゅく)の三つから成ります。

 この咄は品川歩行新宿の白木屋の元板頭ナンバーワンのお染の心中騒ぎです。九月の衣替えになると、見世のおばさんや若い者を招いてご馳走をする「移り替え」の行事があります。そのために四十両(現在の640万円)という大金が必要になりますが、今のお染にはそんなお金を集める実力はありません。これでも元ナンバーワンの女の自負がありますから、恥を晒すくらいならいっそ誰かと心中しようと思うようになります。そこで選ばれたのが貸本屋を営む金さんです。一冊いくらで本を貸して行商しますから、とてもお染さんの願いを叶えられるはずもありません。が、好きになった女性の頼み、むげに断れるはずもありません。それでは・・・、という、少々滑稽な話です。
 江戸時代は「買わない、ためない、捨てない・・・少ないもので、人生を思いっきり楽しむ」世界でもまれなエコ社会でした。人々の識字率は高く、19世紀後半の江戸ではほとんどの子どもが手習所で読み書きを習うようになり、本の人気は大変高かったのです。本はすべて手作りのものでしたので、当然価格も高めで、誰でも買えるものではありませんから、貸本屋さんを通して大切に読まれていました。
 江戸時代の日本は大変すぐれた社会で、ゴミさえ循環させる素晴らしい仕組みができていました。江戸での紙の供給は浅草あたりで、紙買いが反故紙や紙くずを買い集め、浅草千住あたりの紙漉き職人などによって再生されます。
本のサイズは小さく薄いものが多く、出版時期はお正月に限られ、名目上、子どものお年玉と称しましたが大人も一緒に楽しんでいたようでした。
  
   
〔目黒のさんま〕
 品川区の「目黒のさんま祭」のイベントの起こりとなったのが『目黒のさんま』です。江戸時代お大名は国元をはなれて江戸にいるときも、時に馬で遠乗りをすることがあります。この咄のお大名は日本橋から2里半(約10�)ほどの目黒の地に向かい、野駆けの後、野立て休んでいると、どこからともなく良いにおいがしてくる。聞くと、さんまの焼いているにおいだという。家来に頼んで近所の百姓に譲ってもらった焼きたてのさんまの美味しいこと。「さんまは目黒に限る」と言うお大名。世間とかけ離れた生活を送っている大名の世間知らずを話題とした滑稽話です。

江戸時代の目黒付近(江渡切絵図尾張屋版)より  「為御菜」=おかず番付
 魚介類は、江戸前の内海のみならず、房総あたりからもたくさんの魚類が、日々、江戸の魚市場(日本橋と新場)に届けられました。このお大名が食した秋刀魚は恐らく銚子沖辺りから水路を使って江戸に運ばれたのかもしれません。目黒の百姓は採れた野菜を品川宿の「青物の市場」(青物横丁)に売りに行き、帰りに南品川から目黒川に沿って北に伸びる猟師町で買ったのではないでしょうか。
 江戸時代は現代人が考えるよりもはるかに新鮮で豊富な食材に恵まれ、おいしい食生活を送っていたといえるかもしれません。
 新興都市として誕生した江戸は男性が多く、女性が少なく長屋におかみさんの居る時代ではありませんでした。しかし、18世紀後半の幕府の経済政策によって社会が活性化し、19世紀になるとすべての長屋が二階建てなりました。つまり男が結婚して子どもをもうけるようになります。その子どもたちは成長すると読み書きの手習い、稽古事に通い、当然、仕事を持ち社会進出しました。
 落語は男が語って、男が聞く。登場人物には男性が多くて、一般的に女性はあまり出てきません。『大山詣り』や『芝浜』に登場するおかみさんたちは、非常にしっかり者で、まじめな存在です。江戸時代における庶民の暮らしのなかで、おかみさんの果たした役割が大きく、おかみさんたちが存在することによって、江戸のエコ生活が完成したと言えるでしょう

カテゴリ:平成27年度

投稿日:2016年02月12日