品川区の環境ポータルサイト

過去の講座を紹介します

環境情報活動センターでは、毎月2~3の環境学習講座を開催しています。リサイクル講座・木の実などを使ったクラフト講座・自然観察などのフィールドワーク・夏休み子ども講座・環境教養講座など、多彩な内容でお送りしています。 このコーナーでは、講座のレポートを掲載していきます。(過去の講座を紹介しますのトップへ戻る

異常気象と人類の選択

カテゴリ:平成27年度

投稿日:2015年12月04日

 平成27年11月24日(火)、環境情報活動センターにおいて環境学習講座「異常気象と人類の選択」が開催されました。講師は一昨年から昨年にかけて公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書」の主執筆者で、国立環境研究所気候変動リスク評価研究室長の江守正多氏です。
地球温暖化の問題が叫ばれている今日、現状はどうなのか、これから先どうなるのだろうか、それに対し私たちはどう考えたら良いのかということについてお話ししていただきました。
先日パリでは不幸な事件が起こってしまいましたが、11月30日からパリでCOP21が開催されます。今後新たな方向性が示されてゆくことになると思いますが、現時点で地球温暖化はどのように考えられているのかを知っていただき、これから報道される情報をご理解していただく際のご参考になればということでの開催でした。

    
●基本的な話「地球温暖化のしくみ」
地球は太陽からエネルギーをもらっています。一方、地球は宇宙に向かって赤外線としてエネルギーを放出しており、この両者は釣り合っています。CO2などの温室効果ガスのお蔭で地球の平均気温が15℃くらいになっていますが、もし温室効果ガスがなかったら地球の気温は−19℃くらいになってしまいます。一方、温室効果ガスが増えすぎると温室効果が強まりますが、これは人間活動によるものです。
(本日の講座では、「気候変動」と「地球温暖化」は同じ意味)
  
①過去100年くらいの間でCO2の濃度が着実に上がっています。
②世界平均気温の約150年の変化を見ると、かなりギザギザで不規則に変化していますが、長期的にみると0.85℃上がっています。
③夏の北極海の海氷面積は、100年前に比べて半分くらいの面積になっています。
④世界の平均海面水位は、約20cm上がっています。
以下、主に温度上昇について記載します。
  
観測結果(黒い線):年によって平均気温の上下はあるが、10年ごとに平均して細かい変動を取ったもの
シミュレーション:理論的に計算して求めた地球の温度の変化(赤帯と青帯)
赤帯は過去の実際の気候を再現して計算したもの、青帯は実際には起こらなかったことで、自然の要因のみで計算したもの(人間活動の影響がなかったとしたもの)です。これによって人間活動によりCO2が増えていることと温暖化の因果関係が分かります。
●将来予測
赤帯(人類が何も対策等の努力をしなかった場合):4℃くらい上昇します。
青帯(人類が最大限の努力をした場合):2050年ころに温度上昇が止まって、その後はほぼ横ばいになります。
温度の変化のしかたについて、時間・空間的変化についてのシミュレーション結果を映像で見ました。赤くなったり青くなったり(温度の上下変動)、気候は勝手にゆらゆら変動します。このようにして気候は変動しながら、全体として赤くなって(温度が上昇して)いきます。

  
●極端現象(異常気象)の過去および将来の変化
異常気象とは、ある場所で30年に1度くらい起こるような稀な現象で、人が一生のうちで1〜2回経験する程度のものです。温暖化すると異常気象は増えるのでしょうか?
気候は勝手にゆらゆら変動し、たまに極端にふれることがありますが、それは自然現象です。ある場所ある時に大雨が降ったが、温暖化のせいですかと言われても、温暖化のせいであるともないとも言えません。長期間のデータを見ると明らかに回数が増えている、強いものが増えているということをまとめたものが、下の表です。
   
●リスクと適応策
異常気象が増えることにより、さまざまなリスクがもたらされます。
「5」食料は場所や種類によって異なることがあり、暖かくなって生産性が上がる作物もあります。
「7」、「8」は温暖化がなくてもいろんな原因で起こります。
気候が変わっていった時に、それにあわせて我々は対応しなければなりません。適応策です。
   
しかし、適応だけでは限界があり、温暖化自体を止めないといけません。どこで、何度で止めるか?
ある種の温暖化の影響は既に受けています。ある程度の温暖化の影響は受け入れていますが、もうこれ以上の温暖化の影響を受けるべきではないというレベルを決める必要があります。それはどこか?
●気温上昇量と「懸念の理由」
世界の平均気温の上昇について、産業革命前をゼロとした場合、さまざまな角度から温暖化の深刻さを見てみました。
・世界経済への影響という点では、まだ温暖化の影響は出ていません。
・深刻なのは、「固有の生態系や文化」で、サンゴ礁の白華や死滅、高山植物の絶滅等ですが、お金に換算するとあまり大きくはないかもしれませんが、その地域に住む人たちにとっては取り返しのつかない問題が起きています。どの見方が正しいかは科学だけでは言えず、社会の価値判断が入ります。いろんな考えの人がいるので、全体の価値判断が必要です。温暖化を何℃でとめるか、すでにそれは掲げられています。
●国際社会が掲げている目標は2℃
 産業革命前を基準に世界平均気温上昇を2℃以内に抑えるというのが国際的な目標です。今から徹底的に対策をすれば2℃よりも低く抑えられる可能性がありますが、それを今から始めても効果が表れ、気温上昇が収まりはじめるのは20〜30年後になります。
「徹底的に対策をする」ということはどういうことをすればよいのでしょうか。世界全体のCO2の排出量をゼロにしなければなりません。途上国も含めてです。もの凄い規模の話をしているということです。それで2℃目標が達成できるのです。
  
どのようにすれば良いのでしょうか?これまで以上に世界が豊かで便利になりながらです。CO2の排出をゼロにする、エネルギーの作り方を大きく変えるのです。まずは無駄なエネルギー消費を止め、再生可能エネルギー(太陽、風力、バイオ・・・)の利用を進めることです。原子力は選択肢としてはありますが。火力発電の高効率化、CO2を地中に埋める技術(CCS)等々です。
●「人類の選択」の意味
温暖化が進んでいくと様々な悪影響が出ます。2℃でとめようとすると相当思い切ったことをしなければなりません。温暖化が進んでも、止めてもリスクがあります。両方ともいやだということはできない時代になったのです。何らかのリスクをとって、リスクを管理しなければなりません。それを示したのが下の表です。温暖化の捉え方は人によって違い、いろんな意見があります。

  
●「気候の正義」という考え方
今まで温室効果ガスを排出してきたのは先進国(と新興国)で、最も深刻な被害を受けるのは貧しい途上国や弱い立場の人たちです。この人たちは今までCO2を排出してきていません。他の国のせいで気候の問題が起こっているのは著しい不正義、不公正の問題であるという認識で、社会運動が起きています。
●今年に入ってからの世界の動き
・エルマウ(ドイツ)G7サミット宣言の中に、2100年までに世界経済を「脱炭素化」するという言葉が入りました。
・ローマ法王が「回勅」(宗教的に非常に重要な文書)で、温暖化を防ぐために文化的な大革命が必要であると論じました。
・米中両国が気候問題について共同宣言を行いました。
・11月30日からパリでCOP21が開催されます。 
●COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で何が決まるか?
・2020年以降、世界が協力して温暖化対策に取り組むための枠組み(ルール)を作ります。
・各国の対策目標は自主的に決めて提出します。
・しかし、これらをすべて足しても「2℃以内」目標には足りません。→5年後に目標を強化する?
●地球温暖化問題「解決」の鍵は
温暖化対策については意見の対立が見られます。敢えて分けると「技術だ」、「社会のしくみを変えることだ」という両意見に分けられますが(下表)。しかし、どちらが正しい、間違っているということではなく、世の中にはいろんな考え方があるので対話を続けることが大切です。
この問題については、例えばこまめに電気を消しましょうという話では済みません。それは大切であり、やっていただきたいことですが、その上で、このスケールで何が議論されているか、自分の意見はどうか、周りの人は何を考えているか、世の中をどんなふうに変えていきたいと考えるか、温暖化というのはそういうことを考える重要なきっかけになると思います。 

 
●質疑応答
多くの質問がありましたが、その中で最近のニュースで取り上げられた問題について
<質問>南極の氷は減っていると考えられていたが、最近それが増えているというニュースを聞いたのですが?
<回答>最近のNASAの研究では、南極の氷が増えているという報告がありましたが、それは必ずしも信頼性が高いというものではなく、これまでの研究結果を覆すというほどの報告ではありません。
南極の氷の量は、「①温暖化により南極で降る雪の量が増え、氷が増える」と「②氷が動いて滑り、海に流れ落ちて氷が減る」の差し引きで決まります。これまでの多くの研究では②が①より多いというものでしたが、今回の報告では①が②より多いというものです。
この内容についてはYAHOOニュースをお読みください。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/emoriseita/20151118-00051570/

●アンケート結果
「話の内容は高レベルであるのに、非常に分かり易く解説されていて驚きました。」「気候変動について、単なる温暖化対策だけでなく、そこには社会経済の問題など、さまざまなものがあることを知りよかった。」「2℃の気温上昇を達成する事がCO2排出ゼロと同じだというのが最大の驚きでした。」「スケールの大きな話で、色々と考えさせられました。」「温暖化問題が個人レベルで解決できるものでない事、世界レベルで対策が必要である事を改めて確認できました。」など、非常に多く方からご意見を頂きました。
このテーマの重要性と関心の高さを改めて感じました。
以上

カテゴリ:平成27年度

投稿日:2015年12月04日