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過去の講座を紹介します

環境情報活動センターでは、毎月2~3の環境学習講座を開催しています。リサイクル講座・木の実などを使ったクラフト講座・自然観察などのフィールドワーク・夏休み子ども講座・環境教養講座など、多彩な内容でお送りしています。 このコーナーでは、講座のレポートを掲載していきます。(過去の講座を紹介しますのトップへ戻る

都会の鳥〜観察と発見の楽しみ

カテゴリ:平成27年度

投稿日:2015年11月11日

平成27年10月18日環境情報活動センターで、環境学習講座「都会の鳥〜観察と発見の楽しみ」が開催されました。今回は主に、身近に生活しているツバメの生態をとおして、人と都市環境についてNPO法人自然観察大学学長の唐沢孝一先生からお話いただきました。

 
●都市って
都市と対極に農村・自然がありますが、都市の機能は消費するばかりで循環していない。環境で一番大切なのはリサイクルであり、都市部でも作物を育てて消費する、循環型社会が重要です。自然から農村、農村から都市、都市から巨大都市へと大きく変化して行っても、都市に動・植物は棲んでいます。
●都市化と都市生物
�減った動物 アオバヅク、ヒバリ、ホオジロ、モズ、メダカ
�増えた動物 スズメ、ハシブトガラス、ツバメ、ドバト、キジバト、ムクドリ、オナガ、ヒヨドリ、
       ハクセキレイ、シジュウカラ、アオサギ、ヒドリガモ、カルガモ、カワウ、
ワカケホンセイインコ、ヒト、タヌキ、ドブネズミ、クマネズミ、ゴキブリ、
アオマツムシ、ヨコヅナサシガメ(カメ虫の一種)
タヌキは皇居を始め、都市にたくさん棲んでいます。東京23区でタヌキを見た方はいらっしゃいますか?の問いかけに「馬込で見ました」の声があがりました。クマネズミはもともとジャングルで生活していたので、木登りがうまく、都市の電線や配管などが「代替環境」となって増えています。
�ツバメ・カラス・スズメの観察
 千葉県にある成田山新勝寺、市川市全域、東京駅周辺を約30年に渡ってツバメを調べ、同様に東京都心のカラスを30年、またスズメは3年間(約1000日)のうち678日調べています。長い間これらを調べていると新しい世界が見えてきます。
●ツバメ調査
ツバメは空を飛ぶことに特化しています。飛びながら水を飲み、えさを取り、眠る。しかし飛びながら
卵を育てることはできないので、他の動物が来られないような場所、つまり人の住んでいるところに巣
を作ることになりました。巣は泥と藁を唾液で固めて作ります。唾液には粘着性があり接着材の役目になっています。ツバメは田んぼの害虫を食べてくれる益鳥として大事にされてきた歴史があります。
●東京都心のツバメ
 銀座1丁目にもツバメの巣がありましたが、もともと銀座には泥がなく、頑丈な巣ではなかったので、巣が落ちてしまいました。そこで住民は段ボールで巣を補強してあげました。これは日本の農村の稲作文化そのものであり、田んぼの害虫を食べてくれるツバメを大事にする心を持っている人がいたことになります。神田三崎町の印刷会社の駐車場にもツバメは巣を作りました。週休二日制で土日に駐車場が閉まり、ツバメの出入りが出来なくなると、そこに穴を開けていつでも出入りできるようにしました。農村の古い家の面影が残っています。やはりツバメは大事にされていることが分かります。

 
図は「お帰りなさいツバメたち」(大日本図書)より引用。
●ツバメの観察
�東京駅周辺
30年前の東京駅周辺には、国鉄ビル(JRビル)、丸ビル、中央郵便局や多くの銀行があって、ツバメはたくさん巣を作っていました。街の中で子育てをして、皇居でえさを採っていましたが、街の開発と共に徐々に減少、1985年に44か所あった営巣建物が2015年には16か所になりました。大手町・丸の内地区にも、1985年に8か所あった建物が、2010年には読売新聞社1か所となり、2011年には0カ所になりました。
�駅のツバメ今昔
 昭和40年代、50年代に上野、御茶ノ水、秋葉原、両国、錦糸町、有楽町、新橋、品川、五反田、目黒の各駅にあったツバメの巣は、現在では全くなくなってしまいました。特に五反田駅には巣が20か所もあったと確認されています。しかし、五反田在住の参加者は「気が付いていないかもしれないが、現在はないと思う」と答えました。
�成田山新勝寺参道のツバメ
 新勝寺の門前町である成田の参道にはかつて多くのツバメがいて、1995年に86か所の繁殖が確認されています(唐沢先生の調査)。ところが成田が国際都市になるとともに、道幅は広くなり、きれいに改築されましたが、それに反して2015年には9か所の繁殖が確認されるだけとなりました。特に個人商店、個人住宅にあった巣の多くが減少し、公共施設に残る傾向が見られました。
�千葉県市川市のツバメ調査
 市川駅南口の商店街では、ツバメの巣は1985年に35個ありましたが、2011年には全くなくなりました。バブル期に多くの水田が宅地に変わり、個人商店からビルになるなど環境が変わったことが原因していると考えられます。しかし市内全域にツバメがいなくなったわけではなく、1986年の調査では215か所250個だった巣が、2011年の調査では177か所243個でした。駅周辺で減少しましたが、市郊外では増えていました。従って市川市全体で見ればそれほど変わっていないのではないかとも考えられます。同様に東京都では減少しても、埼玉県、神奈川県、千葉県では道の駅、サービスエリアなどで増加しています。
�人とツバメの関係の歴史
 縄文時代の晩期に水田の稲作が始まって、ツバメは人と共存してきました。平安時代になると竹取物語などにツバメは描かれて、江戸時代には俳句にも読まれているように人家で繁殖してきたことが分かります。しかし、最近は、都心や農村の過疎化が進み、ツバメへの関心が低下し、くわえて鳥インフルエンザなどもあって、人との距離が離れつつあるようです。
現在の環境やツバメの生息状況を過去と比較できるのは、30年もの長い間、調査観察を続けているからこそ、分かってくることだと考えられます。自然を記録する作業は今やっておかないと自然そのものがなくなってしまいます。人とのつながりが濃密なツバメは環境を考えるうえで重要であり、カラスやスズメとともに、今後も観察を続けていきたいと結ばれました。
唐沢先生の「品川区内にツバメの巣はありますか?」との質問に、お二人の方が手をあげました。一か所は西大井駅付近の自動車整備工場の車庫にあり、もう一か所は旧東海道の駐車場にあるとのことです。 

カテゴリ:平成27年度

投稿日:2015年11月11日