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江戸時代の仏像〜エコに徹した仏像づくり〜

カテゴリ:平成25年度

投稿日:2014年03月11日

2月19日(水)品川歴史館において、環境学習講座「江戸時代の仏像」(講師:品川歴史館学芸員 湯本幸子氏)が開催されました。2月8日(土)に開催予定でしたが、45年ぶりの大雪のためこの日に延期となり、仏像の歴史・種類や構造・環境と江戸時代の仏像について、豊富な資料とスライドをもとに講義をしていただきました。

    
1 日本仏像彫刻の歴史
仏教が日本に伝来したのは、諸説あるが538年とされ、最初にもたらされた仏像は金銅製の像で、「きらきらと金色に輝いた姿」をしていた。それまで日本にあった像は「埴輪」や「土偶」といった形状だったので、当時の人はおそらく大変驚いたと考えられる。仏像の作られた年代については、像の様式によって時代が分けられるが、史学の時代区分とは必ずしも一致していない。
●飛鳥時代538(又は552)年〜 白鳳時代670年頃〜
日本で最初に作られた仏像は、安居院(あんごいん)(飛鳥寺)の金銅造「飛鳥大仏」像で、火災で焼けたため創建当時のものは額の部分ほかと言われているが特徴は残っている。�杏(きょう)仁形(にんけい)の眼(杏仁形とはアーモンドの形、上下の瞼が同じ弧を描いていること)�古拙の微笑・アルカイックスマイル(唇の両端がやや上向きになり微笑を浮かべたようにみえる)�左右対称の特徴などがある。他の作例は、法隆寺金堂の釈迦三尊(しゃかさんぞん)像、法隆寺夢殿の救世(ぐぜ)観音像、興福寺の仏頭(旧山田寺仏頭)、深大寺の釈迦如来倚像(いぞう)。

  
●奈良時代(天平時代)710年〜
寺院の造営がますます盛んになり、さまざまな材が用いられるようになった。土を用いた塑像、漆を用いた乾漆像ができ、抽象的な表現から写実的な表現へと変化し、人に近い貌をした像がつくられるようになった。作例としては東大寺法華堂(三月堂)の月光菩薩立像(りゅうぞう)や興福寺の八部衆立像(阿修羅像)などがある。

   
●平安時代前期784年〜
この時代以降、日本では木彫りの仏像が中心となった。木彫は銅造や塑像、乾漆像より工程が単純で、量感を生かした造形が可能である。さらに密教の伝来と流行により、仏像の種類が飛躍的に増加した。インドで古来より仏像用材として珍重された、白檀で作る壇像(だんぞう)は、日本ではカヤ材を使って作られた。この時期の作例としては東寺(京都市)の五大明王像などがある。
●平安時代後期950年頃〜
和様(わよう)が成立し、末法思想が流行して浄土信仰が盛んになった。釈迦の死後2000年を経ると末法の世となり、仏法が衰える。日本では1052年から末法に入るとされたため、盛んに仏像が作られるようになった。また、この頃仏師は寺院から独立して工房を構えるようになった。作例としては、平等院鳳凰堂(宇治市)の阿弥陀如来坐像などがある。
●鎌倉時代1185年〜
武士が台頭したこの時代の仏像は、写実的で力強く重量感あふれる体躯や深く刻まれた衣文に特徴がある。仏師は平安時代後期の仏師定朝の三代目以降、円派・院派・奈良仏師(慶派)と分かれて活躍するようになった。作例としては、東大寺南大門の金剛力士像(運慶・快慶・湛慶ら作)などがある。
●南北朝時代1333年〜
●室町時代1392年〜
仏像の需要が一層増加し、各地に工房を構える仏師が現れた。新たな表現は求められなくなり、前代の踏襲が続く。作例としては、東寺の大日如来坐像などがある。

●安土桃山時代1568年〜
2 仏像の種類と構造
【像の種類】
・如来…阿弥陀、釈迦、薬師、大日など。如来とは悟りを開いた仏。衣一枚つけただけの姿で表現される。
・菩薩…観音、地蔵、日光、月光など。菩薩とは悟りを開いていない修行中の仏。出家前の釈迦の姿が基本なの
    で、きらびやかな衣装をつけている。
・明王…不動、五大明王など。明王とは如来の教えに従わないものを懲らしめる仏。怖い姿をしている。
・天部…十二神将、四天王、吉祥天、弁財天など。天部とは仏を守護する仏。元はインドの神々。
【像の材質】
・金属…銅・金・銀・鉄など。銅造のものが多い。
・土…粘土で塑像を造った。奈良時代に流行。
・布・漆…麻布を漆で塗り重ねて造る。脱活乾漆像(ダッカツカンシツゾウ)と木心乾漆像(モクシンカンシツゾウ)がある。
・木…木材はクスノキ、カヤ、ヒノキ、ツゲ、ビャクダンなど。
・石…その場所にある石に直接彫るものと切り出した石に彫刻するものがある
【像の構造】
・金属(銅造)…鋳造(ちゅうぞう)。蜜蝋で原型を造る、蝋型鋳造が一般的。蝋は柔らかいので細かい部分まで表現できる
・塑造…心木に縄を巻きつけて、その上に土を塗り重ねて形をつくる
・乾漆造…心木に土を塗り重ねて形を作り、その上に麻布を漆で何層にも貼り重ねる。最後に土を取り出す
・木造…木を彫り、形を作る。木は大方、一木で造る一(いち)木造(ぼくづくり)、一木の像を楔で割る割矧造(わりはぎづくり)、数材を寄せて造る
    寄木造(よせぎづくり)がある。
  
3 江戸時代の仏像1615年〜
現存する7割近くの仏像がこの時代に造られた像である。庶民に至るまで、幅広く信仰が広まった時代で、寺院の増加や信仰の拡大に伴い、各地で多くの仏像が造られた。仏像の分業化が進み、形式化が進んだため、美術的な価値が見いだせなくなった。作例としては、旧寛永寺五重塔の阿弥陀如来坐像のほか、品川区内では品川寺の銅造地蔵菩薩坐像(1708年造立)がある。
4 仏像とエコ
1300年以上前に造られた仏像が残っているのは、信仰に守られ、人々が大切に守り遺そうとしたことによる。仏像が破損してぼろぼろになっても、新品と替えるのではなく元の材料を無駄にせず材を補い修復すること、また、江戸時代の仏像にみられる細かな材を用いて必要な部分にのみ材を充てて彫刻する、といった必要最低限の材料で造ることはエコにつながっているのではないか。今後仏像を見たとき、作り方などを考えると、仏師の工夫を通じて「限りあるものを無駄にしない」エコの面も見え、信仰とは違う視点があらわれて面白いと思う。
仏像は信仰の対象であることはもちろんだが、それと同時に文化財でもある。一見「仏像」と「エコ」という言葉は関係がないようにも思えるが、守り伝えることで広くはエコにも繋がり、昔の仏師の工夫や考えを学ぶことで現代に生かせることもある。ものとそこに込められた精神を大切にする心を忘れず、後世に伝えていきたい。

カテゴリ:平成25年度

投稿日:2014年03月11日