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過去の講座を紹介します

環境情報活動センターでは、毎月2~3の環境学習講座を開催しています。リサイクル講座・木の実などを使ったクラフト講座・自然観察などのフィールドワーク・夏休み子ども講座・環境教養講座など、多彩な内容でお送りしています。 このコーナーでは、講座のレポートを掲載していきます。(過去の講座を紹介しますのトップへ戻る

ツバメの生態から見た品川区の環境~観察と発見の楽しみ

カテゴリ:平成28年度

投稿日:2016年11月16日

平成28年10月30日、環境情報活動センターで環境学習講座「ツバメの生態から見た品川区の環境~観察と発見の楽しみ」が開催されました。昨年も開催され大変好評だった唐沢孝一先生(NPO法人自然観察大学学長)に、今回は品川区のツバメの生態を通して、人と環境についてお話いただきました。

   

●ツバメの特徴

ツバメの特徴は抜群の飛翔能力を持っていることです。生きている虫しか食べないツバメは、飛んでいるえさを捕まえることができますが、卵を産んで子育てをする巣をどこに作るか、確実な場所は前年に成功した所です。ツバメの天敵はカラス、スズメ、ヒト、ヘビ、ネコなどで、カラスには卵やヒナを食べられる、スズメには巣を乗っ取られるなどの被害があります。ヒトは天敵であるとともに保護者(味方)でもあり、水田稲作文化の延長でツバメは大事にされ、巣を守ってくれます。そのため住んでいる人の意識がツバメにとっての良い環境といえます。31年前の1985年(昭和61年)にJRの駅、上野・秋葉原・御茶ノ水・東京・有楽町・品川・五反田にはたくさんの巣がありましたが、2011年(平成23年)にはすべてなくなっていました。ツバメが棲めない環境に変化してしまったということです。今年山手線の駒込駅に巣作りをしたツバメがいましたが、親鳥が来なくなってヒナが死んでしまいましたとのこと。来年に期待したいですね。

●ツバメの生態

①食物:飛翔昆虫で、「水辺+緑地」が必要

②繁殖:巣の材料は「泥、わら」でできていて、営巣場所は「建物」で、人に依存

③巣数・営巣場所の変化:50年~100年の長期にわたって巣の位置を調べることで、環境の変化を調べることができます。

    

●品川区のツバメ調査は?

①実施時期 2016年5月~7月

②調査場所 品川区全域 22.8㎢

③調査者 シルバー大学「いきいきコース」受講生

調査協力:品川自然観察会、カラサワールド品川の会、カラサワールド八潮の会、木鳥会(目黒区)

     品川区環境情報活動センターのエコだより、ホームページなど

④調査の方法

 居住地の近くを分担する。ツバメの巣を発見したら、住所建物の位置などを確認して地図上に記す。

●品川区のツバメの位置を地図上に数字で記入しました。以下はその一例です。

 

(3)大和電器(小山):30年前から繁殖、従業員全員で巣を見守り、大事にしている

(5)バーミヤン(荏原):中原街道に面しているが、ガレージの中で繁殖、巣立ちまで見守っている

(8)秀和マンション(西五反田):2回繁殖。

(9)明電舎(大崎):巣の数が3個だが、うち1個で繁殖。2個は古い巣

(13)立正佼成会(二葉):センターに連絡あった情報。巣が落ちないように板を打ち付け補強

(23)マンション(東大井):管理人が人工の巣を作成し、飛来した日時、いつ番(ツガイ)になったか、

産卵、孵化、巣立ちなどを調べて見守っている。

繁殖中断:扇田ビル(南品川):カラスが巣を壊したため、放棄

その他数多くの情報が寄せられました。

●品川区と他地域の比較

ツバメの巣の数は品川区28ヶ所、市川市178ヶ所、東京駅19ヶ所、千代田区38ヶ所となっています。品川区ではマンション43%、事業所(オフィスビル・商店)43%、一戸建て3%なのに対し、市川市ではマンション13%、事業所26%、一戸建て24%となり、ツバメの営巣地を通して環境の違いが分かります。 

商店街の減少など環境変化に伴い、ツバメは営巣場所を変えていきました。品川区ではマンションやオフィスビルに巣を作り、巣の場所もガレージが82%を占めています。今まで巣が確認できなかった八潮でも、団地の3階外壁に巣を作るツバメがいました。今回は放棄されましたが、来年以降繁殖に成功するツバメがあるかもしれません。

【質問】

○ツバメは増えているの?

 いつに比べて?ということが調べられていないのでわからない。ただ石川県全県をあげて調査した時には減っていたが、市川市を調査した時にはたいして減っていなかった。日本全体では、期待をこめて、それほど減っていないのではないかと思う

○巣立ったツバメはどこに行くの?

 冬には南、東南アジア方面に行く。越冬箇所やルートも分かっている。親鳥では同じ巣に戻ってくることが多いが、若鳥では別の場所のことが多い。

○ツバメの平均寿命は?

 平均寿命は短い。子どもの死亡率が高いので(1年弱)、平均すると短くなってしまうが、5~10年位生きるものもいる。

○ツバメに予知能力はあるの?

 ツバメについては判らない。阪神大震災の時にカラスが騒いだとか、三宅島の噴火の際、被害にあった牧場では牛は事前に移動していた。動物の予知能力については不明なことが多い。

○巣がまとまっているとのことですが、縄張りはあるの?

 まとまっているといっても、3~5mは離れている。巣の周辺の縄張りはあるが、餌をとる大空では縄張りはない。

品川区の近所にツバメがいるということは、周辺に緑と水辺があること、巣を作るための泥やわらがあること、カラス、ヘビ、ネコなどに脅かされない環境があるということです。ツバメの子育てにとっての最大の環境は住民です。住んでいる人のツバメへの意識が最も重要な環境と言えます。

昨年の講座で、唐沢先生は「品川区内にツバメの巣はありますか?」と質問されました。その時には西大井駅付近の自動車整備工場の車庫と旧東海道沿いの駐車場の2か所しか判明していなかったのですが、今回の調査でこんなにもたくさんの巣が発見されたのには驚きました。

「自然を記録する作業は今やっておかないと自然そのものがなくなってしまいます。人とのつながりが濃密なツバメは都市環境を考えるうえで重要であり、カラスやスズメとともに、今後も観察を続けていきたい」とおっしゃっていたことが実践され、今後も未来のために残しておきたい資料となってくれるような講座でした。

カテゴリ:平成28年度

投稿日:2016年11月16日