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過去の講座を紹介します

環境情報活動センターでは、毎月2~3の環境学習講座を開催しています。リサイクル講座・木の実などを使ったクラフト講座・自然観察などのフィールドワーク・夏休み子ども講座・環境教養講座など、多彩な内容でお送りしています。 このコーナーでは、講座のレポートを掲載していきます。(過去の講座を紹介しますのトップへ戻る

カナダ極北の大自然の動物とイヌイットの人たち

カテゴリ:平成24年度

投稿日:2012年06月12日

5月20日(日)環境情報活動センターにおいて、環境学習講座「カナダ極北の大自然の動物とイヌイットの人たち」が開催されました。過去3回講師をお願いしている自然写真家の丹(たん)葉(ば)暁(あき)弥(や)氏をお迎えし、カナダ極北の大自然に生きる野生動物、先住民族イヌイットの人々の暮らしや氷山などの自然について、豊富な写真をもとに講義をしていただきました。講義の合間に参加者が質問すると、すぐ答えて頂ける、和やかな講座でした。

  
●極北の位置
14年くらいカナダ・ハドソン湾の南西部にあるチャーチルでシロクマの撮影をしていたが、今回はそこより先の北極圏の少し手前、「極北」を訪れた。船で回る10日間のツアーで、モントリオールから飛行機で3時間、ケベック州の一番上あたりから船に乗り、行く島々のほとんどは無人島、世界中の150名位の人が乗船していた。夏のツンドラ大地には日本の蚊の5倍くらいの大きさの蚊が多く、網のネット帽をかぶって防いだ。植物はワタスゲの他にも約30種類くらい見かけ、あとは地衣類(ちいるい)(菌類と藻類からなる共生植物)が多かった。人間がほとんど入っていないので、トナカイの角など大地に放置されていた。船で回った地域はハドソン海峡(ケベック州オンタリオ州マニトバ州ヌナブト準州にはさまれた海域)で、この海峡には氷山が流れ込んでいる。
●シロクマの分布
この界隈にはたくさんのシロクマも棲んでいる。ツアーに参加してすぐ見つけることができた。ゴムボートに乗り換え海鳥の多く生息する無人島に向かったが、ここの崖には数万羽のハシブトウミガラスの巣がある。なぜ険しい崖に巣を作るかというと、崖下にはシロクマ、崖上にはキツネなどの小動物やカモメなどがいて狙われるから。落ちてくるウミガラスを食べるシロクマもいるようだ。シロクマは地球上に25000〜30000頭生息しているといわれているが、ケベック州の北のフォックス半島には約1割の2300頭生息しているとみられる。
●動物の種類
ウミガラスの他にもたくさんの珍しい動物がいるが、ジャコウウシも見られた。ジャコウウシは北極圏に近いところにしか住んでいない珍しい動物で、切り立った崖の急斜面の岩場を登っていて、地面にはその毛が何箇所も落ちていた。アジア大陸のジャコウウシは乱獲されて絶滅してしまい、現在では北米大陸やグリーンランドなどに生息している。ウミガラスの別種、オオウミガラスは北半球のペンギンと言われペンギンそっくりの白と黒で、切り立った崖に無数に巣を作って暮らしている。セイウチも高緯度の所に生息しているので、自然界ではなかなか見ることはできない。2〜3mの大きな体だがとても臆病な動物で、天敵はシロクマである。シロクマの方が体は小さいが、あわててパニックになった時に踏みつけられたような個体をねらう。
●イヌイットの人たち
イヌイットと同様なモンゴロイドにエスキモーがいるが、エスキモーはアラスカ州に住んでいる先住民族で、カナダに住んでいる先住民族がイヌイットである。訪問した村は人口約500名程度、物流は難しく小さなスーパーが1つある位である。村の生計は工芸品を作る(石や動物の角や骨の加工など)とかカナダ政府より税金の優遇などの保護で成り立っている。アザラシの肉やトナカイの肉、ベルーガ(白イルカ)の燻製やなど味見をしたが、鮭の燻製のような味でやや塩辛いが、おいしかった。
●船の目的
一つには観光客を乗せて動物をみせることを目的にしているが、もう一つは捨ててある燃料の缶などを回収する目的もある。たいていは燃やしてしまうものだが、それ以外は処分できない。鉄道や定期船がないので年に何回か、ゴミを回収することが大切な使命となっている。
●上陸した島
極北の湿地帯には高山植物のほか食虫植物なども咲き、昆虫もたくさんいる。このあたりは年間を通してほとんど観光客の来ない土地で、観光客は今回のツアー客の150名程度。人はほとんど来ない土地なので、クジラの骨など、そのまま放置されていた。やや離れた村は人口1500名で、岩の工芸品の土産物を作り売っている。この村にも毎年シロクマは来ていたが、近年数が減った、来るシロクマの体が小さくなっていた、との意見があった。30年位前には雄のシロクマは体重800�と言われていたが、現在ではその半分400�でも大きな個体であり、シロクマは小型化しているようだ。氷の期間が短くなり、食べ物が減ってシロクマが小型化したのは、やはり地球温暖化と関係があるのではないか。極地に行けば行くほど温暖化が進んでいると感じた。
●野生動物観察
入り江に入り込んで上陸し、麻酔銃を持ったガイドが先に行き野生動物を探した。遠くにカリブー(トナカイ)やさらに遠くにシロクマを発見した。シロクマは海の上や氷の上、海岸にいるイメージだったが、山の斜面にもいたので驚いた。氷の上のアザラシも見ることができた。
●不思議な風景
氷山は氷河が海に落ちて、切れて流れたものだが、ビルの10階建てくらいの氷山がたくさんあった。日本では珍しい白夜、蜃気楼、サンピラー、オーロラよりも更に珍しい夜光(やこう)雲(うん)(または夜行雲:二つの漢字あり)も今回みることが出来た。通常の雲は地上10�付近に出来るのに対し、これは地上約70�位付近にできる(オーロラは地上100�)雲で、高い位置に発生するため、地平線の下にある太陽を反射して光っている。非常にきれいな現象だが、地球環境の悪い現象だと思うと残念である。二酸化炭素や温室効果ガスの影響で、低い位置でも見られるようになってきたと言われている。そのほかにはグリーンフラッシュが見られた。
★白夜:真夜中になっても薄明になっているか、または太陽が沈まない現象
★蜃気楼:密度の異なる大気の中で光が屈折し、地上や水上の物体が浮き上がって見える、または逆さまに見える現象
★サンピラー(太陽柱):日の出または日没に、太陽から地平線に対して垂直に炎のような光が見られる現象
★グリーンフラッシュ:太陽が完全に沈む直前などに、緑色の光が一瞬輝いたようにまたたく非常に稀な現象。見えると幸せになれると言う
●一番大きな町(ヌナブト準州の州都イカルイト)
極北に限らず発展途上国のインフラが整備されていない地域は、ゴミの処理ができない。チャーチルで生ゴミをシロクマが食べている写真を撮影したことがあるが、ゴミの分別や処理など大変遅れている。地球のことを考え、みなさんも家族でゴミの話をしてほしい。ゴミの写真を撮ることによって、伝えられることは伝えていきたい。この町では建物の土台が地面に付いていない。ツンドラ地帯で地面がフカフカということもあるが、地球温暖化防止のため、建物の地熱が地面に伝わらないように直接建てない。
●質問いろいろ
・子供たちは何語をはなしているのか 
   →英語です。地元のイヌイット語が話せない子もいる。
・寒いのか
   →寒いです。北海道より寒い。冬はマイナス50℃
・食べ物、野菜はあるのか
   →野菜はほとんどない。野菜が取れなくても身体が進化した。
・狼はいるのか
   →狼は棲んでいるが、今回は見ていない。
・シロクマの毛色は
   →シロクマの毛は透明なので、周りの環境で色が変わる。
    シロクマは白くなく、黄色い。氷の上だとすぐ見つけられる。
●おわりに
前回までの講座はカナダ北部チャーチルを中心にシロクマの環境について講義をしていただきましたが、今回はさらにカナダ極北に生息する動物やイヌイットの人たちについてお話いただきました。通常個人のツアーでは行くことの困難な場所で、氷山、蜃気楼、夜光雲などの自然現象、珍しい動物たち、イヌイットの人たちの生活など初めて聞くお話で、写真も初めて見るものばかりでした。
シロクマが生息できる環境を守り、地球温暖化を少しでも食い止められるように生活したいと感じました。

カテゴリ:平成24年度

投稿日:2012年06月12日