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過去の講座を紹介します

環境情報活動センターでは、毎月2~3の環境学習講座を開催しています。リサイクル講座・木の実などを使ったクラフト講座・自然観察などのフィールドワーク・夏休み子ども講座・環境教養講座など、多彩な内容でお送りしています。 このコーナーでは、講座のレポートを掲載していきます。(過去の講座を紹介しますのトップへ戻る

パンダと私たち〜動物園で野生を学ぶ

カテゴリ:平成23年度

投稿日:2011年09月23日

 平成23年8月25日(木)に品川シアターにて環境学習講座「パンダと私たち〜動物園で野生を学ぶ」が開催されました。講師は今年も動物園ライター 森 由民さんです。
上野動物園にも再導入され、大人にも子どもにも大人気のジャイアントパンダが主題です。他にもレッサーパンダやキンシコウなど、動物たちの野生での生態や、こうした動物に対する人間の責任と共生の道についてお話し頂きました。
 今年、上野動物園に中国からジャイアントパンダ リーリーくん・シンシンちゃんがやってきました。(写真1)
 ジャイアントパンダと聞いて知らない人はあまりいないと思います。でも、ジャイアントパンダって一体どんな動物なのでしょうか。

(写真1)
たとえば、次のうち、ジャイアントパンダと最も近縁なのはどれでしょう?
レッサーパンダ、 ニホンアナグマ、ツキノワグマ、アライグマ
 答えはツキノワグマです。ジャイアントパンダは、広い意味でのクマ類に属します。そして、現在では中国のごく限られた地域にわずかな頭数が残存するだけの中国の「国家一級保護動物」で、竹を主食とした雑食性の哺乳類です。主食は似通っているものの、レッサーパンダはアライグマ類に近縁です。ニホンアナグマはイタチ科です。
 では、ジャイアントパンダを含むクマ類について、少し学んでみましょう。
世界にクマの仲間は何種類いるでしょう?
 答えは、以下の8種類です。
ヒグマ、ホッキョクグマ、ツキノワグマ、マレーグマ、アメリカクロクマ、メガネグマ、ナマケグマ、ジャイアントパンダ
 ジャイアントパンダは進化の歴史の中で最も早く、今から約2000万年以上も前に、他のクマ類から枝分かれし、現在にいたっているといわれています。

 ジャイアントパンダは竹を片手で持って上手に食べます。わたしたちから見れば、当たり前に見えますが、ヒトも含めて、霊長類は物を握るのが飛び抜けて上手です。親指が他の指と向かい合っている哺乳類は霊長類しかいません。この手の構造が重要です。講演では、水を詰めたペットボトルを使い、親指を活かすかどうかで、片手でのつかみやすさががらりと変わることを体験してもらいました。

 ジャイアントパンダには、わたしたちのような便利な親指はありません。しかし、彼らの手にも、別の特殊な構造があります。本来の指以外に、それらの指と向かい合って、ヒトの親指のような働きをする骨が二か所あります。
他のクマ類にも似たような骨はありますが、パンダほど発達していません。

山本省三・喜多村武(遠藤秀紀・監修)『ヒトの親指はエライ!』(講談社、2011年)より

長野市茶臼山動物園・レッサーパンダの森
 哺乳類の中で片手で物がつかめるのは、他にもレッサーパンダ、チンチラ(モルモットの仲間)などがいます。これらにもジャイアントパンダと似たような骨の発達があるようです。また、哺乳類以外では、鳥類は足の趾(指)で物をしっかりつかめます。特に、木に止まるタイプの鳥はヒトの手と似たような仕組みの足をしているといえます。哺乳類も鳥類も、それぞれの必要によって、似たような機能を持っているのでしょう。
世界四大珍獣
 ジャイアントパンダ、オカピ、ミニカバ(コビトカバ)、ボンゴは世界四大珍獣と言われています。ジャイアントパンダ以外はすべてアフリカに生息しています。
オカピはキリンの仲間です。オカピの一見シマウマにも似た姿(オカピとは「森の馬」の意)は、キリン類の祖先型に近いと考えられます。森の中にとどまって昔ながらの姿を保ったオカピに対して、サバンナに出たキリンは高い位置にある葉っぱを効率よく食べられる、大型で首の長い動物に変化していきました。ジャイアントパンダは早い段階で、他のクマ類と枝分かれしました。ミニカバも森にとどまった組で、サバンナ進出組は大型化し、現在のカバになったと考えられています。ボンゴはアフリカにしかいないレイヨウの一種(ウシの仲間)で、高地の森林に生息しています。世界四大珍獣はどれも、動物たちが環境に適応しながら進化してきた道筋を感じさせてくれる存在です
 
ジャイアントパンダとわたしたち
 クマのぬいぐるみ「テディベア」は良く知られていますが、「テディ」は第26代アメリカ大統領 セオドア・ルーズベルトの愛称です。狩りに出かけた大統領が捕獲されたアメリカクロクマを見逃したという逸話から誕生したのが「テディベア」なのです。

 しかし、テディベアとジャイアントパンダには、少々皮肉な関わりがあります。1869年にフランス人神父ダヴィドがジャイアントパンダの毛皮を手に入れてから、中国の奥地に住む彼らの存在は少しずつ世界中に知られるようになりました。けれど、それは、この「珍獣」を手に入れたいという欧米人たちの動きの活発化でもありました。そして、1929年に欧米人として初めてジャイアントパンダを仕留めたのは、セオドア・ルーズベルト大統領の二人の息子だったのです。
 その後、引き続いての乱獲や森林の開発とともに、ジャイアントパンダはその生活を脅かされる歴史が続きました。近年にジャイアントパンダを襲った問題として、1970年代半ばの竹の一斉枯死があげられます。竹は数十年から百年ごとに竹林全体が一斉に枯れてしまいます。ジャイアントパンダの生息地が十分に広かった時代なら、彼らは竹林が生きている別の森に移動してゆけばよかったのですが、現在では道路などで森が分断され、この時の竹の一斉枯死では、大量のジャイアントパンダが餓死しました。まさに人間の活動が招いている危機なのです。
 このように、すべてにおいて責任を負っている人類であるからには、わたしたち自身が、同じ地球上に住む野生動物との共生の道を描き出さなければなりません。それが出来ていくならば、動物たちと私たちとの間に、もう少し幸せな関係が訪れるかもしれません。現在、中国では保護研究施設を中心に、ジャイアントパンダの飼育や野生復帰の取り組みも積み重ねられています。日本を含む海外飼育園館も、これと協調しています。動物園で、生き生きとしたジャイアントパンダと向かい合いながら、彼らをめぐる歴史と現在にも想いを馳せていただければと思います。

カテゴリ:平成23年度

投稿日:2011年09月23日