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区民環境記者レポート(記者募集中)

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この夏の一冊

カテゴリ:令和2年度

投稿日:2020年08月12日

梅雨が明けた東京は、毎日太陽が照りつけ、セミがここぞとばかりに大合唱。ジージー、カナカナ、ミ〜ンミンミ〜ン・・・。そんなセミの世界には、恐ろしい感染症が存在するらしい。

“病菌が操る「ゾンビゼミ」、腹部脱落したまま飛行・交尾で感染拡大”

この衝撃的なタイトルにつられてインターネット記事を読んでしまいました。感染すると腹部を食い落とす「マッソスポラ」菌。自分の胞子を食い落とした部分と入れ替え、宿主を殺さず生かし続けながら胞子を撒き散らす。なんと凄い生命力!

私たちヒトの世界では、新型コロナウィルスが感染を拡大しています。ところで、ウィルスって何?ウィルスは宿主を殺してしまえば、自分も生き残れないっていうけれど、どうして宿主を殺してしまうの?ウィルスってどんどん変異するっていうけれど、なぜ?そんな疑問を教えてくれる一冊に出会いました。タイトルは

“ウィルスは悪者か お侍先生のウィルス学講義”
著者:高田礼人、出版:亜紀書房、
発行:2018年11月9日
 

高田先生は北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの教授。エボラウィルスやインフルエンザウィルスなどの伝播・感染メカニズム解明や診断。治療薬開発の研究を行っているそうだ。

表紙のデザインはウィルスの模式図(わかりやすく特徴を捉えた細胞の図)

ザンビアでのエボラウィルスの「自然宿主」探しから始まり、香港での「高病原性鳥インフルエンザ」のヒトへの感染経路の調査や、アラスカやシベリアでのカモ(インフルエンザウィルスの自然宿主)の糞拾いとご自身の体験談から、ウィルス研究実験室の構造から防護服・創薬研究まで、今私たちの身近にいるウィルスについて、比較的わかりやすく書かれています。印象に残ったところの要約・抜粋を下記に挙げてみました。目に見えない相手でも、知ることによりむやみに恐れる気持ちが薄らいできます。また、30年前の岐阜新聞朝刊の見出し「2020年、人類の半数が伝染病に」がSNS(会員制交流サイト)上で話題となっているそうです。地球温暖化問題だけでなく、「自然宿主」の環境を侵食してきたヒトの責任についても考える機会も与えてくれます。この夏の一冊=ステイホームのお伴として手に取ってみてはいかがでしょうか!?

<要約・抜粋>

●「生物の定義」では3要件が存在する。

(1)自己と外界との「境界」がある。

(2)自己を「複製」して増殖する。

(3)自身で「代謝」を行い、生命維持や増殖に必要なエネルギーをつくり出す。

ウイルスは、(1)と(2)はYESであるが、(3)については単独で自律的に増えることができない。その意味では「無生物的」。でも、生物に感染し、細胞内への侵入に成功すると、その仕組みを活用し、ときには細胞そのものを乗っ取り、自身を増殖させる。その段階では(1)の「境界」がなくなる。ということで、ウィルスは、生物と無生物の中間に位置する「曖昧な存在」である。(p26〜40)

●自然界におけるウィルスの生態を考えるうえで、「宿主域」という重要な概念がある。ある特定のウィルスは、多くの場合、特定の宿主生物にしか感染できない。「宿主の壁」とも呼ぶ。この壁を乗り越え、自然宿主である野生動物からヒトに感染することがある。偶然に感染が成立し、かつ、宿主が重い病気を引き起こさないと感染成功。しかし、ごく稀には、病原性や致死性が高いウィルスに生まれ変わることもある。宿主に利益をもたらすウィルスも存在する。内在性レトロウィルスの遺伝子からは、哺乳類の胎盤形成の際に重要な役割を果たすタンパク質を発現する。ヒトはウィルスと「共生」している。(p83〜91)

●ウィルスの感染によって致命的な病気を発症するのは偶然の産物でしかない。さまざまな条件がたまたま合致しただけのことだ。ウィルスからしてみれば、自身の遺伝子を増やして残しているにすぎない。ウィルスに意思がない以上、ヒトを傷つけようとする「悪意」が存在するはずもない。宿主を殺してしまえば、ウィルスは自らの生存の土台をも失う。ウィルス感染症への向き合い方は、ウィルスの生存環境に踏み込んで行った私たち人間が、考えていかねばならないことなのである。(p345〜346)

<参考WEBサイト>

セミのニュース
https://www.cnn.co.jp/fringe/35157666.html

岐阜新聞のニュース
https://www.gifu-np.co.jp/news/20200727/20200727-259604.html

    

令和2年8月6日
環境記者 小滝静子

カテゴリ:令和2年度

投稿日:2020年08月12日