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過去の講座を紹介します

環境情報活動センターでは、毎月2~3の環境学習講座を開催しています。リサイクル講座・木の実などを使ったクラフト講座・自然観察などのフィールドワーク・夏休み子ども講座・環境教養講座など、多彩な内容でお送りしています。 このコーナーでは、講座のレポートを掲載していきます。(過去の講座を紹介しますのトップへ戻る

世界の巨木を訪ねて知る自然の神秘

カテゴリ:平成29年度

投稿日:2017年07月10日

 6月18日(日)環境情報活動センターセミナールームで、環境学習講座「世界の巨木を訪ねて知る自然の神秘」が開催されました。講師には写真家の吉田繁氏を迎えて、世界の巨木や自然環境について、豊富な写真と動画をもとに講義をしていただきました。吉田氏は30年位前、屋久島の縄文杉取材をきっかけにして、世界中の3,000カ所ほどの巨木を訪れていらっしゃいます。当センターでお話しいただくのは3回目になりますが、毎回多くの参加者に珍しい各国の写真や動画を見せていただいています。今回はアンコールワット(タ・プローム)を撮影したモノクロ写真もご持参いただき、通常では見られない大きなプリントの作品を、近くから拝見することができました。

①アメリカ西海岸(シアトル)
シアトル近郊オリンピックナショナルパークのレッドシダーの写真を見せていただきました。倒れた巨木に着床して芽を出した深い森があります。このような苔むした場所は日本では、屋久島(鹿児島県)か大台ケ原(奈良県)くらいしか見られません。
 
②カナダ
バンクーバーの北にあるクィーンシャーロット諸島には、自然豊かな森が広がっています。私はここが好きで何度も訪れていますが、100年ほど前に先住民族が天然痘の流行で大勢亡くなり、廃墟になってしまいました。彼らの建てたトーテムポールが残るだけで、現在は国立公園になっています。また、自然の豊かなこの島では、熊が鮭を捕り、食べ残した鮭を森にそのまま放置し、やがて鮭に含まれる海のミネラルが森の木々に取り込まれて樹を大きく成長させ、また豊かな川を形成して鮭が育つ、という循環がうまく行われています。ここでは、「所有」という概念がなく、森は誰のものでもありませんでした。先住民は豊かな自然や巨木たちとともに生きてきました。

③イギリス
イギリスは14世紀までは木材の輸出国でしたが、現在森林率が10%を切るほど少なくなってしまったせいか、ガーデニングなどがとてもさかんです。教会にあるオークやイチイの写真をたくさん見せていただきました。この国では教会や貴族が「所有」することにより、巨木たちは大切に残されてきました。

④マダガスカル
アフリカ大陸の東側にあるバオバブで有名な島です。バオバブはアフリカ大陸、オーストラリア、インドにも生息しています。乾燥を好むバオバブは水の多いところでは生きられません。近年主食の米を栽培するため、灌漑用水が作られバオバブの生育が危ぶまれる状態になりつつあります。地球温暖化で大潮の時に海水がせまってくるようになると、近くにあるバオバブは生きていかれなくなるかもしれません。
南アフリカにある世界一大きなバオバブは幹の太さが約45mありますが、その幹回りの太さをロープで確認しました(木の幹回りは凹凸により大きく変動するため、おおよその幹回りの太さ)。外側に座っている人だけ立って、セミナールームを一周しました。それでも約20mで、二周以上という結果に参加者は全員驚きの声を上げて、その大きさを実感しました。
 

⑤台湾
台湾ヒノキの写真を見せていただきました。法隆寺の五重塔や薬師寺金堂など「昭和の大修理」で使われた木材はこの台湾ヒノキです。台湾の阿里山付近には、大木が多くありますが、斜面で生えているので大きさは測れません。日本では幹回りの大きさを測る場合は、地上1.3mの高さを計測するそうですが、外国では特にきまりはないそうです。台湾では開発が進んで、巨木の周りが公園のようになってしまいました。樹の神々しさと自然との付き合い方を大事にしたいと思っています。

⑥日本
宮崎県椎葉村の「大久保のヒノキ」は平成6年に国指定の天然記念物に制定されました。以前にはなかった柵などで保護されたことは、人が訪れることを考えると仕方のない面もありますが、集落の中、自然にポツンと建つ姿は、巨樹がこれまで生き抜いてきた周囲の環境と見事に調和し、何とも言葉に表せない神々しいように思いました。
その他、「親子スギ」(鹿児島県屋久島)「亘理のスダジイ」(宮城県亘理町)「日本で2番目に大きい来宮神社のオオクス」(静岡県熱海市)「ブナのあがりこ大王」(秋田県由利郡象潟町)など日本には他の国・地域には見られない、ブナ・ケヤキ・クリなど多くの種類の巨樹・巨木があります。 

⑦カリフォルニア
世界最長寿の木は、カルフォルニア(米国)の標高3,000mホワイトマウンテンにある松の一種、ブリスルコーンパインでその樹齢は4,800年と言われ、年輪を顕微鏡で測ると確認できます。巨木とは言えない、見た目では細くて弱々しい木です。サン・テグジュペリが星の王子様で書き記したように、本当に大切なものは、見た目ではわからない、目には見えないものなのだと実感させてくれます。

⑧ドイツ
ドイツのある村の有名なミヅナラの木が枯れかかり、村の人々は2つの対処方法を話し合いました。 (1)支えを作り、薬剤注入などの延命措置をする。(2)放っておく。この村では(2)を選択し、木の自然な寿命にゆだねることにしました。そして、木が枯れる前に種子を取り、発芽させて、寄付金をもとに村のあちこちに子孫の幼木を植えることにしました。樹の保護というわけではありませんが、「受け継ぐ」という発想が活かされた例です。

各国のたくさんの巨樹・巨木の写真と、南アフリカの子ども達が歌う現地学校の校歌や巨木ツアーの様子の動画が印象的でした。アンコールワットでは、ジャングルの遺跡を整備する時、インド・中国・日本などの国に振り分けて開発が行われたそうです。国によって整備の考え方が違い、遺跡を覆う木(ガジュマル)を取り払って創建当時のように美しくするという国もあったようです。私はジャングルに長い間、埋もれた遺跡は木に覆われたままの方が自然であると感じました。
バオバブの「年輪はない、水分が60%、花が美しい」など初めて知ったことが多数ありました。
他にもブナ林、鳥居・注連縄の神域、所有の話など心に残っています。
また、吉田さんが樹を撮影に行ったときは、「樹の周りを観察し、時間をかけて空間・時間を味わって、撮影する」とお話しされました。「屋久島に撮影に行った時、片道5時間歩いて縄文杉を撮影したが、途中の森のことを全然見ていなかったことに愕然として、目的の樹だけではなく、その樹の生えている環境やそこに住む人々のこと、樹がこれまで過ごしてきた悠久の時間を感じながら撮影することにした」という言葉も大変心に残りました。

東京から比較的近い、簡単に行かれる巨木を教えていただきました
・阿久山のオオジイ(千葉県匝瑳市阿久山:JR総武本線八日市場駅からバス)
 樹齢800~1000年、個人の敷地内、今頃の時期にはホタルも飛んでいるそうです
・清澄のオオスギ(千葉県鴨川市清澄:JR外房線安房天津駅からバス)
 樹齢400~800年、清澄寺、他にはクスノキもある
・賀恵淵のシイ(千葉県君津市賀恵淵:JR久留里線小櫃駅)
 樹齢600年、八坂神社のなかにある 
・来宮神社のオオクス(静岡県熱海市西山:JR東海道線来宮駅)
 樹齢2000年、願い事は上から見て時計まわりにお参りすると叶うと言われている

カテゴリ:平成29年度

投稿日:2017年07月10日